「いのちの未来」Creator’s Voice Vol.2~瀬川公雄~ バーチャル空間 クリエイティブディレクター

「いのちの未来」Creator’s Voice Vol.2~瀬川公雄~ バーチャル空間 クリエイティブディレクター

Hypolygon株式会社
瀬川公雄さん

普段の仕事内容

Hypolygonという会社でゲームプロデューサーをしています。「フォートナイト」や「ロブロックス」といったUGC (User Generated Content) プラットフォームを活用したコンテンツ制作を中心に、国内外のインタラクティブ体験を通したプロモーションの企画、制作を行っています。

「いのちの未来」における役割/パビリオンでの担当とその内容

「いのちの未来」パビリオンのバーチャル空間におけるクリエイティブディレクションを担当しました。海外の方含め、今回の万博に来られない方にバーチャルでパビリオンを体験していただけるように、全世界に5億人以上のユーザーを抱えるプラットフォームである「フォートナイト」上でパビリオン体験ができるコンテンツを作成しました。「50年後の街づくり」というメインの体験の企画設計を中心に、全体の体験設計を担当しました。

パビリオンや展示、制作物のコンセプトをどう捉えたか

「ひとりひとりが未来に向き合う」というコンセプトをいただきましたが、誰かに決められたものとして受け取るのではなく、自分自身で考え、選び、形作っていくという姿勢の大切さを問いかけていると捉えました。

プロデューサー 石黒浩との関わりで印象に残っていること

いつも思いもよらない角度からアイデアが飛び出してくるので、ミーティングは毎回とても刺激的でした。例えば、「メタバースの世界は非対称じゃないとおもしろくない」といった常識を疑うような視点が印象的でした。

こだわり

自らの意思で進むことによって先の見えない世界が少しずつ見えてくるという体験を、グラフィックの表現に落とし込むことに大変こだわりました。この体験で集める「想像ポイント」を使って市民の悩みを解決して、選択によって街を変化させるという構造を通して、「未来は与えられるものではなく自らがつくるもの」という感覚を自然に体験できる設計を目指しました。

挑戦

自然と文化が共存する未来の街というのを3D空間に表現することは想像以上に難しい挑戦でした。プロデュースチームのみなさんと、毎週議論を重ねて、何度も案を出して、ブラッシュアップを繰り返して……ということを行い、建築物から空飛ぶ車まで細部に至るまで丁寧に監修いただいて、ようやく完成に至りました。また、フォートナイトのコンテンツは基本的にバトルロワイヤルがメインなのですが、今回は武器などは出さずに平和なコンテンツをつくろうという方針でした。今まで手掛けたことのなかった方向性でしたので、初めての挑戦であり、いい経験になったと思います。

新たな発見

いのちとは何かという問いは、自分にとってはどこか哲学的で距離のあるもののように感じていたのですが、このプロジェクトを通して、その問いが実はとても身近で、私たちひとりひとりに関わるテーマであることに気づかされました。

プロジェクトで得た学び

このプロジェクトを通して、正解を提示するのではなく問いを体験として設計することの力を実感しました。未来とは何か、いのちとは何かという曖昧で大きなテーマを、個人の選択や没入によって自分ゴトに感じられる構造をつくることに今回トライできたので、今後あらゆるプロジェクトにおいて、参加者の内面を動かす設計の考え方として生かしていきたいと思っています。また、他の仕事に比べても、私たちの提案に対してプロジェクトチームのみなさんが前のめりになって「それおもしろいね」と言ってくださることが多くて、それが例えギリギリのタイミングであってもおもしろいアイデアなら取り入れていこう!という後押しをしてくださるスタンスに非常に学ぶ部分がありました。私も今後仕事をすすめる上で、若手のアイデアを前向きに取り入れるような姿勢をより持っていきたいと感じました。

注目してほしいポイント

私たちバーチャルチームだけではなく、プロジェクトチーム全体のみなさんのアイデアがたくさん盛り込まれて磨きがかかったコンテンツになっています。例えば建築・展示空間ディレクターの遠藤さんもゲームのデザインに携わってくださっています。そんな風に多様なメンバーによってつくり上げられた未来の建築物や自然と調和した街並みのグラフィック、細部までつくり込まれたアイデアに注目していただきたいですね。(実は街の中に隠されたアイテムがあり、それを集めるとミャクミャクに出会うことができたりします!)バーチャル空間の色んなところを探索して、自分だけの発見を楽しんでいただければなと思います。