「いのちの未来」Creator’s Voice Vol.5~金子繁孝~ 1000年後のいのち“まほろば” 演出

「いのちの未来」Creator’s Voice Vol.5~金子繁孝~ 1000年後のいのち“まほろば” 演出

金子繁孝さん

普段の仕事内容

ファッションショーやファッションイベントの演出、プロデュースをしています。

「いのちの未来」における役割/パビリオンでの担当とその内容

「ZONE3 1000年後のいのち“まほろば”」の総合演出を担当しました。1000年後のいのちとの出会いという、石黒先生をはじめとしたチームのコンセプトをもとにシナリオを考え、シアター空間において具現化しています。

パビリオンや展示、制作物のコンセプトをどう捉えたか

「人間はテクノロジーと融合して体の制約から解き放たれ、心そのものになる」と石黒先生は言われています。私の仕事は来場者が1000年後のいのちと出会い、心が触れ合い通じ合う体験をいかにつくりあげるかということだと捉え、取り組みました。

プロデューサー 石黒浩との関わりで印象に残っていること

「人間は無機質から奇跡的に生まれて有機物になった。肉体は仮の一時的な姿であって、やがて無機質に戻る。けれども、心は決して失われることはない」という石黒先生の言葉が印象に残っています。

こだわり

アンドロイドと来場者の心が触れ合う瞬間をどのようにつくっていくかということを、構想段階から現場での最終調整にいたるまで試行錯誤しながら取り組んできました。特にアンドロイドの「目」の見え方、輝かせ方に関しては石黒先生、企画統括ディレクターの内田さん、アンドロイド衣装デザイナー・監修の廣川さんと試行錯誤しながら仕上げていきました。

挑戦、工夫

「ZONE3 1000年後のいのち“まほろば”」”では有機的な装飾は何もなく、アンドロイドの「モモ」3体と光、そして音(音楽)のみで設計しています。具体的な言葉を媒体としたメッセージを来場者に伝えるということではなく、アンドロイドと心が通じ合えるような体験をどのように設計するか、石黒先生をはじめチームのみなさんとの会話の中から見いだしていきました。建築チームが設計した高さ13mにおよぶ円筒形シアター空間を、ダイナミックに使うための空間デザインを構想するところからスタートしましたが、光の筋とその動きをアンドロイドの発する言葉のように見立て、空間におけるシナリオを組み立てていきました。アンドロイド「モモ」が来場者に語りかけるような手や指の動き、顔の表情などの繊細な所作、そして所作に呼応して光が明滅したり、色を変えるというようなプログラミングは、ATRチームやハートスチームの素晴らしい技術とハードワークにより実現できたと思います。

音楽は映画音楽なども手掛けられている石橋英子さんに依頼して、1000年後のいのちとの出会い、ふれあいというコンセプトのもと、3分間のナラティブな音源に仕上げていただきました。制作されたマルチトラック音源を、高さ13mの天井から降り注ぐ音、床面に水が流れる音、壁面から響く低音など多方向から活用し、このシアター空間でしか体感できない立体音響空間を構築。心に響く音環境を目指して開幕ギリギリまで調整を重ねました。

注目してほしいポイント

「ZONE3 1000年後のいのち“まほろば”」に入って演目が始まったら、とにかくアンドロイド 「モモ」の「目」を見つめてみてください。