【個社共創MTG】50年後の未来社会における企業の役割とは
共創プロジェクト2025

【個社共創MTG】50年後の未来社会における企業の役割とは

2021年に立ち上げた「いのちの未来共創プロジェクト2025」では、テーマ事業プロデューサー 石黒浩を中心に参加企業7社(株式会社 長谷工コーポレーション、コクヨ株式会社 、塩野義製薬株式会社、シスメックス株式会社、一般社団法人 全国介護事業者連盟万博コンソーシアム2025、株式会社デンソー、阪急阪神ホールディングス株式会社)や多くのサポートとともに、50年後の社会といのちの在り方を模索しています。第1ターム(2022年4〜9月)の各企業との共創ミーティング(以下、個社共創MTG)では、それぞれの業界・領域が50年後の未来社会でどのような役割を担うか、その他に目指すべき領域があるかを、これからの技術シーズ(事業開発を進める上で必要となる技術のこと)を学びながら議論していきました。本レポートでは、個社共創MTGで話し合われた内容の一部をご紹介していきます。

以下、各ご意見・フィードバックは一部を抜粋・編集したものです

株式会社 長谷工コーポレーション

|住環境の改善|AI住宅|仮想世界に住む|

住まいと暮らしの創造企業グループとして、快適・便利なだけにとどまらず、誰もが自分らしく心豊かに生きられる未来を描いていく長谷工コーポレーション(以下、長谷工)。「住む=アイデンティティーを形成する」を元に、50年後の住まいはどういうところであるべきか、また未来の社会通念がどうなっているのかを想像しながら、議論を深めていきました。

プロジェクトメンバー仮説

  • 家の中にその家のことを考えることができる脳があり、色々な技術をその脳=AIで一度考えて、住環境の改善を提案してくれたら面白そう
  • 家電はAIの象徴みたいなところがあるが、家電の機能を全部取り込んだ未来のAI住宅はどういうふうになるのかというのをちゃんとイメージし切りたい
  • 家の中にいながらも半分くらいは仮想世界で生きている人が出てくるとなると仮想世界のアクセスポイントとして家が必要かもしれない。そういうときの家のデザインはどうなるのか、部屋のデザインはどうなるのかというのを考えないといけない

石黒フィードバック

  • シェアというのは50年後でも大きなキーワード
  • 人が住んでAIが学習をするとこういうホスピタリティーのあるサービスを提供しますという家のソフトウエア面が価値になるかもしれない
  • 材料の話、自己修復の話、エネルギーの話、それからバーチャルの話やAIの話があったが、かつての日本家屋の良さを取り戻すのにAIは大きな要素になるのでは

コクヨ株式会社

|未来の学び|自分らしさ|クリエイティビティ|

「働く・学ぶ・暮らす」の領域で事業を展開し、社会課題や変化していく世の中の価値観に向き合い、一人ひとりが輝く未来の表現を目指すコクヨ。企業理念「be Unique.(コクヨは、創造性を刺激し続け、世の中の個性を輝かせる。)」の解釈を深め、50年後の世界で人々が「be Unique.」であり続けるために解決すべき課題や“クリエイティブの本質”について話し合っていきました。

プロジェクトメンバー仮説

  • 誰もが出自や社会システムなどの外的要因に左右されずに、自分らしい生き方を選択できる社会になる。そのような社会が実現した時、人々は「be Unique.」であり続けられると考えている。
  • 将来「働く・学ぶ・暮らす」の境界線がなくなっていく中で、世代を超えて生涯取り組める「学び」は楽しみや喜びに直結する純粋な活動になっている。
  • 2075年、「学び」を通して、クリエイティビティを発揮し人が自分らしく生きるための後押しができるのではないか。

石黒フィードバック

  • 今回の万博で大事にしないといけないことは、日本の文化や伝統をテクノロジーで支えながら、新しい人間の進化の方法の模索。調和しつつユニークになることは絶対にできる
  • ユニークな人だけを応援するのではなく、それぞれの人たちからどれだけ引き出して応援できるのかがコクヨがやっていくことであると理解した
  • 学校(学ぶ)と会社(働く)の壁がなくなった未来の学びの場はどうなるのかというイメージで考えてもらうとわかりやすそう

塩野義製薬株式会社

|薬の概念の広がり|創薬会社は環境会社へ|心が満たされる生き方|

人々が心から求める健康を追求し、これまでにない新たな価値を社会へ届けるために、既成概念にとらわれない発想でヘルスケアの未来を創造している塩野義製薬。薬が抱える課題や50年後に各業界や社会が抱える課題だけでなく、「健康とは」「死を自分たちでデザインできるか」などより本質的な課題へと議論が深化していきました。

プロジェクトメンバー仮説

  • 過去を振り返ると50年の間に、薬の剤形が増えた。注射からフィルムによる飲み薬など。薬の概念は広がってきた
  • 死を明るく捉えてもよい気がする。やり切ったという形になれば一番良いのでは
  • 50年後に本当に肉体から解放され、メタバースみたいな精神世界でいろいろできるようになったときに、必要とされる薬は変わって、体より精神・気持ちの面でどれだけ満足して生きられるかが重要になる
  • 将来の社会通念として自分の健康は自己責任という通念になっているだろう

石黒フィードバック

  • 創薬会社は予防とか早期検知の観点から考えると環境会社になるのかも。環境からどうやって病気が起こるか把握した上で薬を創るのが当たり前になる。例えば、長谷工や阪急阪神など広い環境をモニタリングする企業と協力すると新しい未来が描けるのではないか
  • 個人と環境、体と脳、外部免疫、自己免疫、薬とは何か、治療とは何か、これらの基本的なビジョンを描ければ50年先の未来を描ける
  • 命を何歳に置くのかはこのパビリオンの重要なポイント

シスメックス株式会社

|“こころ”を満たすヘルスケア|“わたし”を自由に選択|バーチャル、そしてユニバーサルへ|

「ヘルスケアの進化をデザインする。」をミッションに掲げ、飛躍的な技術革新がもたらす未来のヘルスケアの世界を、“からだ”だけでなく、人の在り方や本質である“こころ”にも迫りながら描いていくシスメックス。医療の国境がない未来や治療の概念が変わる未来を想像しながら、50年後の暮らしを見据えた課題に向き合っていきました。

プロジェクトメンバー仮説

  • 体を中心とした医療という概念が変わっていて、治療や予防も超え、日常的に状態がモニタリングされて“こころ”と“からだ”をより良い状態にするヘルスケアが当たり前の世界になっているのではないか? 病院はもう病気を治す場所ではなく、人間が機能拡張できたり楽しみも感じられたりする場所になっていてほしい
  • リアルやバーチャル、それからアバター、機能拡張などによって、なりたい“わたし”や環境に合わせた“わたし”を自由に選べるようになっているのではないか
  • デジタルツインやオルガノイドなどの技術で、リアルの身体に負担をかけずに状態を測り、整えていけるようになっていてほしい
  • 未来を考える上で、ヘルスケアが病気=不幸、健康=幸せという固定観念から解放されるように、社会の様々な境界が薄れてグラデーションにつながることをイメージしたい。その上で私たちの活動領域はグローバル、宇宙、バーチャルを含めユニバーサルに拡がっていくことをイメージできれば、面白いヘルスケアの未来が描けそう

石黒フィードバック

  • 人間は人工臓器などのテクノロジーを取り入れて進化している。それ故、生身の身体を持つことは、人間を定義する要件に入らないかもしれない。人間というのは心の部分、精神が重要視される。テクノロジーがさらに進化し、それらを身体が取り込み、生身の体の制約から解き放たれると、心がより重要になる
  • 病院の未来像という意味では「こころを満たすために行く場所」というのは良いキーワード
  • 人間を支える、病院を支えるシステムとしてどこまで機械化が進んで、でもなおかつ心の問題をうまく支えながら発展していく未来をどう描くかというのが大事なところ。全世界視点とか宇宙の視点を取り入れて最先端の医療技術をベースに、+心の問題という感じでまとめてもらえると良さそう

一般社団法人 全国介護事業者連盟万博コンソーシアム2025

|AI+ロボット介護|介護機能のある街|ユートピアのデザイン|

“未来社会”は“未来の介護”でもあると考え、全国の介護事業者が蓄積した技術やノウハウと、企業や専門機関が保有・開発した新しい技術や商品を融合し、高齢者のいのちが輝く“未来の介護”の共創を目指す全国介護事業者連盟万博コンソーシアム2025。介護環境を取り巻く「肉体労働や非生産的な業務からの解放」など50年後のビジョン実現のための課題について議論を重ねていきました。

プロジェクトメンバー仮説

  • A.I.R.(AI+ロボット)介護というモデルを持ち込むことで業務を仕分けして人が担当する業務を価値判断業務に回したい。肉体労働や非生産的な業務から解放されるのではないか
  • 間に介在するロボットたちが活躍していくと気遣いをせずに頼める。そういった心の解放とかお世話にならずに生きていく権利が人にはあってもいい
  • 補助具からユニバーサルデザインに変わったように、街全体も高齢者や障がい者、幼児、児童や子育て世代の皆が使いやすい機能を持たせることで、良い方向にいきそう。それを実現していく上で介護場面ごとの技術革新や法規制を外して実現化していくステップが必要

石黒フィードバック

  • 生きがいとか役割とか社会参加の話がかなり出てきていて、そこもすごくすてきな未来像を出すときに重要なポイント
  • 理想の介護環境を考えることや理想の街や環境を考えることは国民全体の問題だというメッセージをこのチームから出していかないといけない
  • いかに高齢者施設をユートピアにするかというと、寿命が120、150となってきたときに、どういうふうな社会通念になっていくのかいうことで、アンケート調査をしてもらうことはすごく良い。第2タームではアンケートの設計が重要になりそう

株式会社デンソー

|ソウゾウを育む移動|移動は人生をつくる|あらゆることをシームレスに体験|

「未来の移動とは?」をテーマに、2075年に暮らす人々の移動の意味、モビリティの在り方を考えながら未来のモビリティ社会を描こうとしているデンソー。移動によって、人のソウゾウ(想像と創造)は育まれてきました。ソウゾウから生み出されてきた文化に注目しながら、移動が人を進化させ、人の人生そのものをつくっていく存在であることを多角的に検討していきました。

プロジェクトメンバー仮説

  • ソウゾウをさらにかき立てる好奇心やワクワク感をモビリティの技術によって高めていけないか
  • 移動の本質というのは大きく二つの要素があると考える。一つは移動中の五感への刺激がソウゾウを促すということ、もう一つは移動で得たデータや学び、偶発的な出会いがソウゾウをより深めるということ。そのソウゾウを促進、深化させることで、人は進化してきたということではないか
  • 子どもも高齢者も誰でも自由に移動ができて、その自由な移動が新しい発見や学びにつながって、好奇心を高めていく。リアルとバーチャルな世界にいつでも切り替わる、移動できる、というような体験をシームレスに享受できることが求められてくるのではないか

石黒フィードバック

  • 移動は手段ではなく、もともと人間の基本的な機能であって、人間は移動する脳であるというふうに捉えてもよい気がしている。この先もっと進化を重ねた時に移動によって人間はどう変わっていくのか、そんな未来を考えられると良い
  • メタバースで理想的な移動がデザインできたら、それをリアルな車や運転にも使える。どういう視点で新技術を取り入れてまとめるとわかりやすいかが課題。移動を目的にするというメインのゴールもわかっているし、色々な技術が関わることもわかっているのだけど、どうやってうまく新しい技術を組み込むのか

阪急阪神ホールディングス株式会社

|理想の移動・未来の電車|文化の醸成|駅に関わる人々がコミュニティ形成のハブになる|

人々の暮らしを支え、暮らしを彩り、豊かなライフスタイルを提案する企業グループとして、未来社会に向けたメッセージを発信していく阪急阪神ホールディングス。いい街とは何か、また「鉄道×街×エンタメ」の掛け合わせによる50年後の未来はどんなものかなど、鉄道だけでなく多方向に発想を広げていきました。

プロジェクトメンバー仮説

  • 移動と街にいかに遊び心を加えられるか
  • 未来の技術を活用すれば、お客様はどなたでも街づくりの担い手になることができ、「事業者」と「お客様」という枠組みを解放できるのではないか
  • 人が集まり文化を醸成することで、特色あるエリアや新たなエンターテインメントが形成される中、公共交通機関はそれらを周遊するための街の一部として機能するのでは
  • そうして形成された魅力あるおのおのの街をつなぐ駅や駅に関わる人々が、訪れる人と人をつなぐハブ役になることで、すべての駅が独自の特徴を持つ新たなコミュニティの拠点となり、特色ある沿線が育つのでは

石黒フィードバック

  • 未来の街がどうなっていくのかのイノベーションを持つことが大事で、当然そこには鉄道、不動産、エンターテインメントがすべて入ってくる。他とは違うスケールで街を見てもらえれば
  • 理想的な移動とは何か、電車とは何か。切符販売のシステムで何を売ってもいいし、何でもアドオンしてよいとなったら何をするか。駅を自由にしたら駅のゲートはもういらないかもしれない。そして、未来の電車がどういう形になるのか。本数とか長さとか、もっと車両が短く細いものになるのか、女性専用車両や男性専用車両、犬専用車両とたくさん分かれるのかなどを考えてみてほしい

各企業が自社の存在意義と役割を再確認しながら課題の整理とディスカッションを経て、ますます期待が膨らむ50年後の世界。第2タームでは、この第1タームで描いた未来シーンのアイデアをさらに深め、登場人物を設定したより具体的な出来事の想像へと視野を広げ、未来シナリオを形づくっていきます。それぞれが描く未来に加え、企業を掛け合わせて生まれる新たなアイデアやシナリオ展開など、今後届けられる続報にも目が離せません。